帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「友情の星よ永遠に」

「友情の星よ永遠に ー鈍足超獣マッハレス出現ー
ウルトラマンA』制作第37話
1972年12月15日放送(第37話)
脚本 石森史郎
監督 筧正典
特殊技術 川北紘一

 

鈍足超獣マッハレス
身長 60m
体重 5万4千t
超スピードで移動する物体が発する音に不快感を示す。地中300mを移動する。
口から発火性のガスを吐く。両手からミサイルを撃つ。
タリウム光線で倒された。
名前の由来は音速の「マッハ」かな。

 

物語
中学・高校時代の友人だった加島と再会した星司。
加島はマッハの壁に迫るレーシングカーの開発に執着していて恋人の真弓に冷たく当たっていた。

 

感想
マッハレスはおそらくヤプールが残した野良超獣だと思われる。超スピードの物体を襲うように作られていたのだろう。
超獣を見るなりマッハレスと名前を呼ぶ星司。それなのに超スピードとの関係に気付いていないのは……。
ところでマッハレスの肩書きは「鈍足怪獣」であるが、特に足が遅い描写は無かった気がする。

 

TACが現場にいながら犠牲者を出し、さらにマッハレスをみすみす逃がしてしまった事に非難が集中しているらしい。そんな事は過去にも何度かあったと思うが……。
もしかしたらマッハレスは過去にも何度か出現していて、その度にTACは逃げられていたのかもしれない。それなら星司がマッハレスの名前を知っていた事とも辻褄が合う。(それならマッハレスと超スピードの関係にも気付いているべきだが……)

 

地中300mのマッハレスには手出し出来ないと言う吉村隊員。ダックビル号はどうした?

 

星司の中学と高校時代の友人だった加島が登場。
変身超獣の謎を追え!」での赤ん坊の時に死んだ父親、「河童屋敷の謎」での山で遭難した先輩、「ゾフィからの贈りもの」での9歳までおねしょをしていた話、「この超獣10,000ホーン?」でのかつてグレかけていた話、そして今回の学生時代の友人と星司は過去についての話が色々とある。この他にも「ウルトラ6番目の弟」で自分とダンの境遇を重ね合わせたように子供を通して自分の過去を振り返る事もあった。又、第1話「輝け! ウルトラ五兄弟」でのパンの運転手の場面もTAC入隊前の話と考えると過去編の一つに数えても良いかもしれない。

 

どうして加島はあれほどまでに真弓に辛く当たっていたのか?
加島は孤児で貧しかったらしく、今でもそれがコンプレックスになっているらしい。そして開発中のレーシングカーが完成すれば自分は地位も名誉も金も手に入ると言っている。
おそらく加島はまだ自分に自信が無かったのであろう。
今はまだレーシングカーが完成していない。つまり、まだ地位も名誉も金も無い。だから自分には結婚する事、つまり幸せになる事がまだ出来ないと思い込んでいたのかもしれない。
しかし、劇中では加島は主任と呼ばれている。本当は既に地位も名誉も金も手に入れていたのだ。それでも満足出来ない、安心出来ない。だから、もっと上を目指そうとする。おそらく開発中のレーシングカーが完成しても加島はもっと上を目指しただろう。いや、目指さなければいけないと思い込んでしまっていただろう。真弓が加島の後ろ姿が寂しいと語ったのはその為かもしれない。
最後に加島は開発中の設計図を川に捨てる。川にゴミを捨ててはいけないと言うのはこの際置いといて、加島はようやく気付いたのだ。どんなに上を目指しても安心できる事は無い事を、自分に安心を与えてくれるのは地位とか名誉とか金とかではなくて目の前の女性だと言う事を……。

 

それにしても真弓はかなり根性がある。絶対にウルトラの星が見えていたはずだ。

 

今回の変身はかなり危ない。いや、駄目だ! 加島も真弓も気を失っていない。絶対にバレたぞ!
もう、爆風で変身の瞬間は見えなかったとでもしておこう……。

 

「マッハレスは我々TACの手で片付けなければ!」と檄を飛ばしていた竜隊長。結局はエースが倒したがTACもタックスペースの爆音でマッハレスの気を逸らしたりと活躍していた。今回は去って行くエースに敬礼したりと、エースとの連帯感が出ていた。
戦闘中に流れる『TACの歌』が格好良かった。

 

「時間への挑戦。それは進歩しか要求されない人間の宿命かもしれない。特に乗り物のスピードアップは多くの人々に歓迎されているようだが、果たして、それが人間の自然な生き方に貢献していると言い切って良いか。しかし、人間の欲望は自然の流れに逆行してもスピードの新しい記録へ挑戦しエスカレートしていく」。
急速に発展し続ける文明社会と果てしなく上を目指す加島を表した面白いナレーション。しかし、冒頭のこのナレーションに対して「人々は再び新幹線の旅を楽しめるようになった」と言う最後のナレーションの意味がイマイチよく分からない。加島の暴走は止まったが文明の暴走はまだ止まっていないと思うのだが……?

 

鳴り物入りで登場したダンが全く出てこないのはどうなのかな?

 

今回の話は石森史郎さんのウルトラシリーズ脚本デビュー作となっている。
因みに『仮面ライダー』の石ノ森章太郎さんは石森さんの母方のいとことの事。