帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「輝け! ウルトラ五兄弟」

「輝け! ウルトラ五兄弟 ーミサイル超獣ベロクロン登場ー
ウルトラマンA』制作第1話
1972年4月7日放送(第1話)
脚本 市川森一
監督 筧正典・満田かずほ
特殊技術 佐川和夫

 

異次元人ヤプール
身長 不定
体重 不定
地球の空に君臨する異次元人。多くの宇宙人や異次元人を従え、改造生物である超獣を使役する。
地球侵略が目的で、地上の文明を破壊するのに邪魔なエースとTACを狙う。
人間を滅ぼすのは人間だとして、人間の心を突いた作戦を得意とする、まさに悪魔と呼ぶべき存在。
名前の由来は沼正三さんの『家畜人ヤプー』から。

 

ミサイル超獣ベロクロン
身長 55m
体重 4万4440t
ヤプールが現代の地球に送り込んだ超獣の第1号。
発展著しい広島県福山市を襲い、出撃した地球防衛軍を返り討ちにした。続いて東京タワーを破壊してTACの通信網を麻痺させるが、エースのメタリウム光線で倒された。
口から火炎、全身からミサイル、両手から様々な光線を放つ。
口の中にもミサイルがあるので、口の中を攻撃されると体内のミサイルが爆発してしまう。
宇宙怪獣と珊瑚の合体生物らしい。……何故に珊瑚?

 

ウルトラ兄弟
エースと一緒に地球にやって来た。地球デビューとなるエースを見送りに来た感じ。
上から順にゾフィ、初代マン、セブン、ウルトラマン二世、エースとなる。

 

物語
異次元人ヤプールが送り込んだ超獣ベロクロンによって地球防衛軍が全滅し、新たに超獣攻撃隊TACが結成される。
TACの新隊員である北斗星司と南夕子はウルトラ兄弟5番目の弟ウルトラマンエースから大いなる力を授けられていた。大いなる力とは一体?

 

感想
ウルトラシリーズも通算5作目となり、色々と新しい要素が盛り込まれた。

 

オープニングの映像はヤプールの異次元空間を思わせる雰囲気。
過去の作品の怪獣や宇宙人のシルエットが出ているが何故か『セブン』からは選ばれていない。エレキングとかキングジョーとか出してほしかったな。

 

ベロクロン相手に出撃するも返り討ちに遭って全滅してしまった地球防衛軍ウルトラシリーズ最弱の組織と言われる事もあるが、数日でTACを結成するのは難しいし、この後の話で残存部隊も登場しているので、あくまで出撃した部隊が全滅したのであって組織そのものは無事だったと考えられる。

 

ベロクロンの吐いた炎でトラックが爆発してもピンピンしている星司。まだエースから大いなる力を授かっていないのに、なんて強靱なんだ。元々素質があったと言う事なのかな。

 

物語開始時点での星司と夕子の関係だが、どちらも聖エリザベスホームと関係があったので顔くらいは見た事があるかもしれないが殆ど初対面に近かったと思われる。

 

星司がタンクローリーでベロクロンに突っ込んだ後、何故か離れた場所にいたはずの夕子も星司の近くで倒れていた。
おそらく夕子は車椅子の少女を安全な場所に避難させた後に月星人のテレポーテーションを使って星司を助けようとしたところを爆発に巻き込まれたのではないだろうか?
まぁ、この時点では夕子が月星人と言う設定はまだ無いのだが……。
とにかく車椅子の少女が無事で良かった。

 

星司と夕子の生死についてだが、夕子は「さようなら夕子よ、月の妹よ」でエースと分離しても大丈夫だったので生きていたと考えられる。一方の星司は「ベロクロンの復讐」で自分は一度殺されていると言っているので死んでいたのかもしれない。その為か、エースはやや星司寄りに合体していると思われる場面がある。

 

ウルトラ5兄弟が勢揃いする場面でエースが語った「銀河連邦」とは何か?
おそらくウルトラの星の住人が結成したのが宇宙警備隊で、宇宙警備隊や他の星雲の防衛組織が連携して設立したのが銀河連邦なのだろう。星司と夕子はウルトラの星出身ではないので宇宙警備隊ではなくて銀河連邦の所属になったと思われる。
当時の円谷プロは「銀河連邦」の設定を使ってウルトラシリーズと他の作品を連携させる予定だったらしいが実際にヒーロー達の共演作品が作られる事は無かった。しかし、後のウルトラマンゼロシリーズではウルトラマンゼロミラーマンをモデルにしたミラーナイト、ファイヤーマンをモデルにしたグレンファイヤー、ジャンボーグAをモデルにしたジャンボットが登場してウルティメイトフォースゼロと言うチームを結成している。
因みに『ウルトラマンA』の主題歌に「ぎんがれんぽう」と言う言葉が出てくるが、こちらは「銀河連峰」となっている。ややこしい……。

 

ベロクロンによって広島県福山市が襲われるが、当初は広島の原爆ドームを襲う予定だったのが諸般の事情で変更されたとの事。そりゃそうだろうなぁ……。

 

テストに合格してTAC隊員になった星司と夕子。
おそらくTACは最初に各分野の精鋭を集めて、次に民間からも希望者を募ったのだろう。星司と夕子はその中でも抜きん出た成績で合格したと思われる。
戦闘機を操縦した事が無い二人が飛行テストを合格出来たのはエースから授けられた大いなる力のおかげなのかな。

 

二丁拳銃が激カッコイイ山中隊員。
今野隊員がロケット工学のオーソリティと言うのは無理があると思う。
「超獣を一発でやっつける新兵器をまた一つ開発してみたんですがね」と科学者の登場シーンとしてはこれ以上のものは無い台詞を吐いた梶隊員。他の特別チームにはいない位置で存在感があった。因みに今回開発された特殊アダプターは何故か今回は使われなかった。残念。

 

竜隊長が説明する超獣。おそらく防衛会議で決定された名前なのだろう。
竜隊長は超獣を「異次元の改造生物」と言っていながら「宇宙人達が遣わした」とも言っている。宇宙人のパワーアップ版が異次元人と言う感覚なのかな?

 

ヤプールは地球の空に君臨したと語られ、竜隊長は超獣の目的は地上の文明を破壊する事と説明している。『A』は「神対悪魔」の図式があるので、ここで言われている「空」とは「天空」と言う意味かもしれない。(「宇宙」も「天空」と言う意味が入っているのかも)

 

星司と夕子はエースに変身する直前まで大いなる力の正体を知らなかった。どうやらエースと星司と夕子は記憶を共有していないようだ。

 

男女合体変身による男女の性を超えた完全な存在、神とも言うべき存在のエース。ウルトラ兄弟と一緒に現れた幻想的な場面やベロクロンのミサイルを跳ね返す場面等、威厳溢れる演出が多かった。
一方で、男女の性を超えたのに男性の声だったりウルトラ兄弟5番目の弟だったりと気になるところもあった。エースを神のように描くのならウルトラ兄弟を出さなかった方が良かったと思うが、そうするとウルトラ兄弟が登場するイベント編を作れなくなると色々と難しい問題が出てくる。
ウルトラ兄弟の設定や夕子の途中退場等もあって徹底されたとは言えないが、この時代にヒーローに女性の要素を入れようとしたのは物凄く斬新な事だったと思う。

 

ベロクロンは超獣第1号の名に恥じぬ戦いっぷりで生物兵器と言う感じが良く出ていた。エースに敗れはしたが実は東京タワーを破壊してTACの通信網を麻痺させると言う当初の目的は達成している。

 

TACは第1話で既に「脱出!」している。